今日は、参考になった本を紹介したい。
カップル同士による暴力を予防するための、知識や考え方を学ぶ本だ。
それだけでなく、人間関係でとっても役立つ内容がのっている。
著者の伊田広行氏は、DV加害者プログラム・NOVO(ノボ)運営者。デートDV予防教育ファシリテーター。立命館大学等、大学非常勤講師。「ユニオンぼちぼち」執行委員。各所での有償・無償での相談活動(行政での男性相談、貧困相談、労働相談、LGBT相談、自殺関連相談等)をおこなっている。
目次
- 「恋人はこうあるべき」・・・・・その常識がDVになる
- 人生に役立つ「シングル単位」思考法
- 主流秩序から自由になろう
- 恋愛のトラブル「嫉妬」から考える
- 恋愛のトラブル「別れ」を考える
DVの定義
著者はDVを、「相手の『安全・自信・自由・成長』を奪うこと」と定義している。
単なる暴力だけとは違うのだ。言葉や態度で、相手の安全を奪い、自信がなくなるようなことを言い、自由を奪い、成長する機会を奪っていくことだ。
シングル単位思考法とは
著者は、カップルが、対等で非暴力であることを目指している。
恋人同士というのは、「カップル単位」で物事を考えることが多い。
相手と自分は一心同体だから、相手を叩くのは自分を叩くようなもの、愛情があるがゆえだ、という感覚があります。なので、DV的な行動も問題とは思いにくくなってしまうのです。これが「カップル単位」での恋愛感覚です。
カップル単位とは、恋人という2人の関係を1つにまとめて一心同体にしてしまい、一人の存在がなくなってしまうもの。強い方が主導権を握り、一方が相手を支配してしまう。支配された方は依存しきってしまったりする構造が生まれやすい。
一方、シングル単位での考え方は、恋人同士でも適度な距離を保ち、自分も相手も尊重し、自分で自分のことを決めていく考え方だ。
課題の分離
自分が相手を支配したり依存せず、相手も自分も大切にしていくためには、シングル単位の思考をしていき、その思考をするためには、「課題の分離」をしていく。
交際相手との間で起こる出来事を「これは誰の課題か」と常に考え、自分と他者の課題を分離するのです。他者の課題に手を出さず、自分は自分の課題だけに集中するという考え方です。
(中略)
たとえば、ある男性が交際相手の女性に暴力をふるったとします。女性が自分の意にそわない行動をとったため、殴ったのだと言います。そして
「暴力をふるった自分も悪かった。でも、相手の行動にも問題があった」悪いのは自分だけじゃない」
と言うとします。この言い訳は、よくあるDV加害者の感覚で、問題軽視、責任転嫁です。
このときに、加害者がDVしなくなるために必要なことは、「相手の問題は相手の課題なので、それは置いておこう」と課題を分離することです。パートナーにも問題があるかもしれません。でも、それは相手の問題です。
その相手からのある「刺激」に対して、自分がどういう態度をとるかが自分の課題です。DV加害者は、相手からの刺激に対して暴力的な対応を選択してしまった人といえます。それに対して、DVしない人になるには、非暴力的な対応を選択する人になればいいのです。
主流秩序
主流秩序とは、「世間一般のこれが幸せだよ、勝ち組だよという価値観によって人を順位付けすること」です。
学力、経済力、男らしさ女らしさ、話し上手下手、能力のあるなしなどの序列のこと。
これは、常に私たちに競争を強いていく。
そういう価値観に影響されていると、それを相手に押し付けてしまうことがある。
著者はそれもDVだとする。押し付けられて、相手が支配されてしまうからだ。
DVの被害者にも加害者にもならないためには、主流秩序にとらわれないようにすること、カップル単位の考え方から離脱し、シングル単位の視点に立ち、自己肯定感を持ち、相手を信頼し、自立して自分の課題に向き合うことが必要です。
(中略)
人に左右されず本当に幸せになるためには、いつかは、従属や依存、わがままという「カップル単位的な甘え」から離脱し、自分の課題を見つけて、主流秩序にとらわれずに自信をもって自分の道に進むことが必要です。
(中略)
自分の幸せの鍵は自分で握ろう。
感想
この本を読んで、一番感じたのが、シングル単位思考法と主流秩序をしっかり知ると、デートDVの被害者・加害者になるのを予防するのはもちろん、結婚後のDV、また子供への虐待、高齢者虐待なども防いでいけることがわかった。
やっぱり、生きていく上で基礎となる対人関係を学ぶのは中学生になってからだと思う。その頃から、恋人と付き合うようになったりして、デートDVの課題にぶつかるようになる。
シングル単位の考え方を身につけて自分を大切にして、相手も大切にする。被害者にも加害者にもならない。そんな考え方が身につけていければ、その後に家庭内暴力や虐待などということは起きていかないと思う。
もちろん家庭での幼少期からの親の教育やその責任は大切だけど、社会はそこまでなかなか介入できない。
児童虐待件数が年間17000件を超える中、社会ができるのは、貧困をなくしていくことも大切だけど、加害者・被害者にならない考え方を身につけていくことだと思う。
ADHDは、もしかしたら、虐待の被害者や加害者になりやすい傾向があるかもしれないと僕は思う。だから余計に意識が必要だろう。
最後に
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。